今年は、猛暑日がいやと言うほど続いたのでちょっとした異変が起きている。 暑さ対策でしつらえたわが家のゴーヤのカーテンがこの時期になっても大きなゴーヤの実が出現している。葉もまだ青さを保っている。いつもならとっくにゴーヤカーテンの出番は終わっている。今日も大きなゴーヤが４つも取れ、食べきれないのでお隣にお願いしてもらってもらった。たまたまお隣の中学生とお母さんが朝、ゴーヤカーテンの前を横切って歩いていたところに声をかけた。喜んでもらいこちらもうれしくなる。 　これも異変と言っていいのか。今年のサツマイモの出来はいまひとつ・・・。 7月から9月にかけての猛暑で、雨が降らず、栄養が充分にイモに届かなったことが原因かも知れませんね。これは、私の素人考えなのであてになりませんが。 　紅あずまとシルクスイートの苗を5月に植えた。8月に入りイモの茎が畑におおいかぶさり、葉も一面に広がり畑の地面が見えなくなった。これは、成長がよいのでは、とホホが緩んでいたことを思い出す。これこそ「ぬか喜び」というもので、自分の甘さにあきれる。 　収穫した紅あずまは、大小の差が激しい。大きいものは、太くて両手でもってもはみ出すほどだ。小さいものはバナナの太さぐらいであり、しかも変形している。 　シルクスイートは、すべてが細くて土から顏を出すイモに対面すると「よくぞ、ここまでがんばったものだ。」と心の中で声をかけていた。 　収穫して1週間がたったころ、さっそく試食してみた。 まずは、朝の味噌汁でシルクスイートをいただく。味噌のからみとイモの甘さがからみ合い 口いっぱいにイモのうま味が広がる。味噌が甘くなる。 　夕飯には、サケのチャンチャン焼きで紅あずまを入れてみた。初めての試みで果たしてどんな味になるか、期待がふくらむ。いや、サケとけんかにならないか。不安と期待が入りまじり、焼けるまでじっと待つ。 　焼きあがり、フライパンのフタをそっと開ける。キャベツの香りとイモの甘い香りに包まれる。その後からサケの香ばしいにおいが加わり、ぐっと食欲が一気に上昇する。 　これは、いける。サケにイモのうまみが加わり、噛むほどサケの味が濃厚になる。イモを口にふくむと甘い。キャベツの甘さとコラボしてまるでイモようかんの風味がするではないか。口の中は、秋である。 　秋は、うまいもので埋まる。スーパーの鮮魚売り場では、サンマがメインとなりそこに 秋サケが加わり、筋子がならぶ。果物に目を向けるとリンゴ、ぶどう、柿が山積みで、つい手にとってしまう。 　秋の恵みに感謝しながら秋の夜長の夕食のひとときをかみしめている。

「それは、お困りですね。これからそちらにうかがいましょうか。」 いつもながら元気な声がスマホから耳に届く。懇意にしているＳさんからだ。 Ｓさんは、もうあれこれ30年ほど前からお付き合いしている工務店の方である。 　ひと月前ごろからわが家のインターフォンの調子がよくない。玄関先でインターフォンのボタンを押すとピンポンというチャイムの音が聞こえるが相手の声が聞こえない。もちろんこちらからの声も届いていないので、来訪者の方は、「留守」らしいと判断して帰ってしまうことがある。 　たまたま1階に居れば、チャイムの音だけですぐに玄関を開けて対応できるが、これが意外と面倒なことを体験した。来訪者は、様々である。 　某新聞販売店の方、ガスや電気の新規契約訪問の社員、あやしげなリホーム会社の飛び込み訪問、頼みもしないのに不要物の回収はないかと聞き込みにくる廃品回収業者などなど。 　うっかり玄関を開けてしまうとたいへんである。しつこい勧誘者に合うと追い返すのにぐったりと疲れてしまう。 　これは、一日も早くインターフォンを交換するに限る。そこで、工務店のＳさんに登場願うことにした。ここからは、先ほどの電話のやりとりの続きである。 　「小早川さん、確か、そば打ちをやっていましたよね。今でもおやりですか。」 とつぜん、話題がインターフォンの新規交換の話から跳ぶではないか。 心の準備ができていない。いったいどこにつながるのか。 　「はい。月に一度ほどですが集会所をお借りして仲間とそばを打っています。」 　「それは、よかった。実は、そば打ちの道具一式を仲間の大工さんから譲り受けたのですが、よければもらっていただけますか。」 これこそ、予期していない展開だ、まるで宝くじに当たったかのような衝撃が走る。 　「ほんとですか。そんな大事なものを。もちろんいただきます。うれしいです。」 もう私の電話の声がうわずっているのが分かる。 　「すべてそろっています。包丁と麺棒一式、そしてこね鉢とのし板とこま板もあります。」 「それは、すごいですね。もうプロのそば屋さんが使う道具ですね。」 私は、うれしいやら恐縮するやらで、Ｓさんの到着を待った。もうインターフォンの交換は 頭から消えていた。念願だった自前でのそば打ちの道具が思いがけず、手に入るのだ。 　Sさんもそば打ちが趣味であるが、すでに道具一式が揃っているとのこと。それで思いが けず、私に幸運がめぐってきたようである。 　私が打つのは、いわゆる二八そばである。そば粉が４００ｇに小麦粉を１００ｇ入れる。 さっそく後日、打ってみたがうまい蕎麦には届かない。そば粉のせいか、それとも私のうで のせいか・・・。もちろん私のうでがまだまだ未熟の結果である。 　これから奥深いそば打ちの修行にはまりそうな予感がする。